SDV商用化への道のり
SDV商用化への道のり
2024年3月13日
By 鈴木 智之
アリックスパートナーズは自動車・モビリティ分野の多くのプロジェクトを手がけています。
自動車メーカー(OEM)やサプライヤー、テクノロジー企業はソフトウェア・デファインド・ビークル(Software Defined Vehicle:SDV)の開発を加速させています。
アリックスパートナーズは、SDVの定義、開発における戦略、進捗状況等を把握するために、北米のSDV関連の主要セクター(OEM、Tier-1サプライヤー、テクノロジー企業)の経営幹部を対象に調査を行いました。
SDVの開発がどのような進展しているのか、商用化を阻害する要因は何なのか。最新状況を理解しビジネスを検討する一助となれば幸いです。
要点
1.SDV 関連の主要セクターのリーダーら7割以上が4年以内にSDVが市場に投入されると予想する一方、自動車とテクノロジー業界においてSDVの共通の定義がないため、各業界で投資や収益化の方針が異なっている可能性がある
2.SDV開発強化のために現時点で優先的に選択するビジネスモデルは、OEM、サプライヤー、テクノロジー企業の全てが共通して「テクノロジー企業とのパートナーシップ」と回答。SDV開発のスコープや要件が現時点で明確でないため、開発における誤った投資リスクを最小化したい意図がうかがえる
3.OEM、サプライヤー、テクノロジー企業で採用するソフトウェアライセンスの形態、ソフトウェアとハードウェアの統合と検証の手法、ソフトウェア・ハードウェアのリスク管理などにおいて各プレイヤーで意向や優先事項に違いがある。従来の「業界の常識」と「最新のアプローチ」を融合させる必要性が見える
詳細はダウンロードの上、ご覧ください。
SDVの定義
アリックスパートナーズの見解
安全性、セキュリティ、利便性、車両性能などの機能を(ハードウェアや機械ではなく)変更可能なソフトウェアによって制御・変更でき、それらの機能を生産・販売後にOTA技術を用いてアップグレードすることで、新しい顧客体験やパーソナライズされた機能を実装できる自動車
1. SDVの定義と開発強化の取り組み
SDVの定義について、自動車企業はSDVの標準機能、セキュリティ、UXに重点を置く一方、テクノロジー企業はパーソナライゼーションとリアルタイムのデータ処理に重点を置く。
現時点ではSDVの共通の定義がないため、各業界で投資や収益化の方針が異なっている可能性が見える。
1. SDVの定義と開発強化の取り組み
SDVの定義について、自動車企業はSDVの標準機能、セキュリティ、UXに重点を置く一方、テクノロジー企業はパーソナライゼーションとリアルタイムのデータ処理に重点を置く。
現時点ではSDVの共通の定義がないため、各業界で投資や収益化の方針が異なっている可能性が見える。
SDVの商用化に向け、3者(OEM、Tier-1サプライヤー、テクノロジー企業)が現時点で最も検討している、または既に取り組んでいるビジネス・モデルは、「テクノロジー企業とのパートナーシップ」。OEM、テクノロジー企業と比較して、Tier-1サプライヤーの数値が高い。
SDVに取り組む企業は、M&Aや自社開発に多額の投資をするのでなく、パートナーシップを模索している。これはSDV開発のスコープや要件が現時点で明確になっていないため、開発における誤った投資リスクを最小化したいという意図がうかがえる。
2. 採用するソフトウェアの意向
OEMとその他の2者で選択肢が異なる。オープンソース・ソフトウェアの活用はコストを抑え、市場投入までのスピードや開発効率を優先できる特徴があるが、OEMは高コストでありながらも、レガシーシステムやアーキテクチャ、セキュリティや信頼性への懸念からプロプライエタリ・ソフトウェア(私有ソフトウェア)の採用を支持している。
一方で、Tier-1サプライヤーとテクノロジー企業は、オープンと私有ソフトウェアを組み合わせた活用を望み、コア・システムについては、私有ソフトウェアを採用する意向を示している。
2. 採用するソフトウェアの意向
OEMとその他の2者で選択肢が異なる。オープンソース・ソフトウェアの活用はコストを抑え、市場投入までのスピードや開発効率を優先できる特徴があるが、OEMは高コストでありながらも、レガシーシステムやアーキテクチャ、セキュリティや信頼性への懸念からプロプライエタリ・ソフトウェア(私有ソフトウェア)の採用を支持している。
一方で、Tier-1サプライヤーとテクノロジー企業は、オープンと私有ソフトウェアを組み合わせた活用を望み、コア・システムについては、私有ソフトウェアを採用する意向を示している。
3. ソフトウェアとハードウェアのリスク軽減
OEMとTier-1サプライヤーはコンプライアンス、リスク回避、失敗時のリスクやコストを意識して、初期段階のテストを重視している。OEMの約半数が初期段階のインテグレーションの検証、Tier-1サプライヤーの3割がローンチ前のシミュレーションを重視している。
一方、テクノロジー企業の半数近くは柔軟性の高いモジュール・プラットフォームのソフトウェア設計テストの採用を優先している。テクノロジー企業は、パッチ適用が容易で、基本的に進化する、モジュール化されたアーキテクチャを構築することで、尖ったソリューションとマス向けのソリューションを使い分けることができると考えている。
「本調査結果から、OEM、サプライヤー、テクノロジー企業で共通のSDVの定義がなく、開発強化のために選択するビジネス・モデルや収益化、投資の方向性に統一性がないことが明らかになりました。SDV商用化に向けて今欠かせないのは、車両ローンチ時のリスク最小化、相互運用の課題への対処、ソフトウェアとハードウェアの統合アプローチ構築などの領域で開発のベストプラクティスを築くことです。今後、OEM、サプライヤー、テクノロジー企業のそれぞれの違いや期待のバランスを取りながら、従来の常識と最新のプラクティスを融合できる企業こそがSDV分野で大きくリードできるでしょう。」
「自動車が 『スマートフォン・オン・ホイール』へ進化する過程において、新たに形成されるエコシステムのすべてのプレーヤーが厳しい選択を迫られ、出口の見えないような環境下で迅速な対応が求められます。OEMとテクノロジー企業からの圧力に迫られるサプライヤーは、ハードウェアに留まらない領域でイノベーターとしての潜在的な役割を模索する必要があります。一方、OEMは開発における優先順位を管理し、社内の知見、テクノロジー企業とのパートナーシップ、サプライヤーとの連携のバランスを取ることで優位性を構築することが鍵となります。」
SDV商用化への道のり
アリックスパートナーズでは、自動車・モビリティに関する多くのプロジェクトを手がけています。本レポートは、自動車およびテクノロジー業界の経営幹部を対象とした調査に基づき作成しています。
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